あなたのココロを俺のモノにv
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「オレってば中忍になったんだってばよーーッッ!!」



 元気良くナルトがそう叫んだのは、中忍昇格祝いに一楽でラーメンを奢ってやった帰りだった。

 辺りは夕暮れ特有のほの暗い空気に満ちていた。
 回りには足早に帰路に付こうとする人、これから夜の喧噪に紛れ込もうと楽しそうに歩く人
 のんびりと一日の終わりを堪能する人々でそれなりににぎわっていた。
 そんな中をイルカはナルトと肩を並べて歩いていた。


 アカデミーでは”おちこぼれ”と言われていたナルトも、この度めでたく中忍試験に合格する事となった。
 イルカは大喜びで報告に訪れたナルトに、昇格祝いに何か奢ってやると言ってみたところ、
 いつものごとく”みそラーメン!!”と返ってきたので、二人して一楽に行く事と相成ったのだ。
 ちなみに、サスケもナルトと一緒に中忍へと昇格している。
 もちろんサスケも誘ってみたのだが案の定素っ気なく断られてしまった。
 ナルトは「サスケなんか誘うこと無かったってばよ」と強がっていたが、
 内心は一緒に行きたかったというのが分かっていたので苦笑いを浮かべながら
 「そう言うなよ」と言いながら二人で一楽に向かったのだった。



「こらナルト!そんな大声出してたら近所迷惑だろ。」


 そう言いながらイルカは、自分の目の横にあるナルトの頭を小突く。

「いってぇ・・。いーじゃんかよ、ちょっと位騒いだってさ。みんな気にしてねーってばよ」

「そう言う問題じゃない! 中忍になったって言うんならそれなりのマナーをわきまえないといけないぞ」

「ちぇ・・」

 小突かれた頭をさすりながらナルトは口を尖らせる。
 中忍になったと言ってもまだまだ子供っぽいその仕草が微笑ましい。

「・・しっかし、大きくなったよなぁ」

 横で歩いているナルトをしみじみと眺めながらそう言ってやる。
 ここ数年でアカデミーを卒業した頃よりも数段背の伸びたナルト。
 まだイルカには届いてないがその差もあとわずか、そのうちイルカの背を抜いていきそうな勢いだ。
 イルカにとって教え子の成長は嬉しくもあるが、遠く離れていくような感じがして少し寂しくもある。
 今ではイルカを見つけると有無を言わさず腰に飛びついてきていた小さなナルトが懐かしい。
 あの頃のようにそのまま上から頭を押さえつけるのももう無理だろう。

「へへッ、すーぐイルカ先生を抜いてやるってばよ!」

「あ、言ったなぁ!」

 そう言ってまたしてもナルトを小突こうとした時、不意にナルトが立ち止まった。
 何かを気にしている風にも見えるナルトに、イルカも同じように立ち止まって声をかける。
「? どうした?」

「・・・イルカ先生」

 ナルトの声が心持ち少し低い気がする。
 少し俯き加減で上目遣いでこちらを見るナルト。
 その表情は何かを企んでるような顔だが、どこか寂しげな影を落としていた。
 ナルトは少し逡巡した後、ゆっくりと口を開いた。

「・・・オレ、イルカ先生が好きだ!」

「は? あ・・ああ、俺も好きだよ」

 いきなりの事にイルカは一瞬とまどったが、すぐに笑顔でそう返した。
 小さな頃からナルトがいつも言っていた事だからだ。

「あらためてどうしたんだ? お前が中忍になったからって念を押さなくても俺は変わらないぞ?」

 多少違和感を感じはしたものの、それ程気にする違和感でも無かった。
 はずだった・・

「その好きとは違うんだってばよ・・」

   ぽそりとナルトが呟く。

「ど、どうした・・?」

 俯いたいつもと雰囲気の違うナルトに、イルカは戸惑った。
 ナルトははぁーと大きく深呼吸をした後、キッと正面を向いて口を開いた。

「・・だから・・・・」

 ナルトはイルカの方を向き、にかっとした笑顔を見せてさらに続ける。

「・・だから、カカシ先生にはぜってー、負けねーんだってばよ!!」

「え?!」

 ―じゃっね!イルカ先生。

 元気良く、暗闇の向こうに消えていくナルトを、イルカはぼーぜんと見送った。
 さっき、ナルトは何と言った?
 何かものすごい衝撃を受けたはずなのにそれがなかなか頭に回ってこない。
 先程のナルトの言葉にイルカの思考は白く焼き付いていた。



―――・・カカシ先生に、負けないって・・・?





「んー、ナルトのヤツ知ってるみたいですねぇ。オレ達のか ん け いv」



 突如、後ろからわざとらしく間延びした声がしたかと思うと背中にずっしりと重みが掛かる。

「うわっ!カカシ先生?!」

 いつの間に現れたのか、イルカの背にもたれ掛かる様にしてカカシがいた。
 カカシの露わにされた右目は、先ほどの言葉とは違って不機嫌な色をしている。

「ナルトと二人きりでデートですか?」

 そんな事を聞いてくるカカシに、イルカは呆れた声で答える。

「もう、何言ってんですか。ナルトの昇格祝いにラーメンをご馳走してやったんですよ。」

「・・・そりゃまた、しょぼいお祝いで・・」

「悪かったですね!!」

「あ、いやいや・・。なら、サスケは?あいつも中忍に昇格したでしょう?」

「誘ったんですけど、断られたんですよ。」

 少し拗ねたように小さくイルカは言った。
 関係ないがこういうところも可愛いなと思いながらカカシは、勿体なさそうにそうに呟く。

「もったいないことを・・・」

「あなたじゃないんですから・・・。もう、いい加減に離れて下さいよ!」

 重いです!と言いながら、イルカは身をよじる。
 夜中で人通りは無いが、往来の真ん中で男同士がひっつきあっている姿は、さすがに恥ずかしい。
 だが、カカシはそんなイルカに構わずよりいっそう強い力で抱きしめてきた。

「にしても、ナルトまでイルカ先生を狙ってるとは・・・。まだ子供だと思って、油断していた。」

 ナルトが消えて行った闇の先を睨みつけながら、カカシは憮然と言い放つ。
 そんなカカシに、イルカはため息をつきながら諭す様に言う。

「もうっ!まだ子供ですよ。 オレとナルトは今までと何ら変わりありません」

「そんな事言って、さっき揺れたでしょう・・?ナルト格好いいな〜なんて思いながら、あいつの後ろ姿見送っていたんじゃないんですか?」

「何バカな事を・・・」

 そうため息をつくイルカの顎をつかみ、カカシは無理矢理イルカの顔を自分の方へと向けた。

「イルカ先生はオレのモノなんですからね!」



―――ナルトにも・・・誰にもわたしやしません!



 そう言って口布を下ろし、無理矢理イルカの頭を自分に向けその唇に口づける。


(く、首が・・・!!)


 無理な体勢に、イルカはカカシの顔を押しのけようとするが、それに構わずカカシはさらに深く口づけてくる。





「・・・んんっ、・・っはぁ!!」

 しばらくして口を開放され、イルカはようやく新鮮な空気を取り込むことが出来た。
 そして顔を真っ赤にし、肩をわなわなと震わせる。

「・・・っ! こんな所で何すんですか!!!」

「おっと・・」

 ぶんっ!と腕を振り上げ、カカシの顔に肘鉄をくらわそうとしたが、難なくよけられてしまう。

「え〜!いーじゃないですか。減るもんじゃないし。」

「減ります!!」

(へ?減るの??)

 思わぬ言葉にカカシが目を丸くしてると、さらに追い打ちがかかった。





「こんな事なら、カカシ先生なんかより、ナルトの方が何倍もマシですね!」





「・・・・・えええぇぇぇ〜〜〜〜っっっ??!!」


 何気なく言ったイルカの言葉に、カカシの声がおもわず裏返る。
 泣きそうな声を上げているカカシを無視して、イルカは家路に着こうと歩を進める。
 ハッとして、カカシは慌ててイルカに縋り付く。

「えっ?えっ?!何?、イルカ先生ナルトの方に行っちゃうの??」

「離して下さい!もう知りませんよ!!」

「ねえ、嘘ですよね。ねえ、イルカ先生!!」

「知らないって、言っているでしょう!!」

「いやですぅぅ〜〜!絶対、嘘ですよねぇ!!」

「ああもうっ!離せっ!! オレは家に帰りたいんです!」

 それでもなお食い下がってくる上忍に、イルカはトドメの一撃を放った。





「そんなカカシ先生は嫌いです!!!!」







・・・・・!!!!






 イルカが去ってしまった薄暗い通りには、ぼろぼろと涙をこぼしながらうずくまっているカカシが残された。


「・・イルカ先生・・イルカ先生・・イルカ先生・・・」


 ズズッッ
 鼻を啜りながら、カカシは何度も何度もイルカの名を口ずさむ。




「・・うっ・・うぅっっ・・・・っ、イルカ先生っっ〜〜!!!!」





 その夜、木の葉の里には悲しげな上忍の声がこだました………







 後日、カカシのビンゴブックには数々のイルカの同僚に加え、『うずまきナルト』の名が加わったのは言うまでもない。





[とりあえず、終わっとこう・・]

2003.04.?


中途半端、極まるです(泣)
それにしても、ナルトが一番大人っぽいってばよ
とりあえず、告白しただけのナルト、1ポイントリードですv
しかし、カカシ先生、ヘンですね…(汗)

読んでくださってありがとうございました!